こんにちは。
中小企業診断士として、主に中小企業の経営や事業づくりに関わっている SacChi です。
日々、地域の中小企業の方とお話ししていると、
「これまで社長の感覚でやってきた」
「事業戦略までは作っていない」
という声を聞くことがあります。
実際、中小企業では事業戦略を明文化していない会社も少なくありません。
中小企業庁「中小企業白書(2025年版)」によると、経営計画を「策定している」と回答した企業は約50%。
裏を返せば、約半数の企業は、長期的な視点に立った明文化された戦略を持たずに経営しているという実態が浮かび上がります。
一方で、環境変化が激しくなっている昨今、
「感覚だけで経営する」ことのリスクは、年々高まっているとも感じています。
💡 でも、安心してください
とはいえ、これまで戦略を作ってこなかった経営者の方にとって、
ゼロから事業戦略を策定すること自体が高いハードルに感じられるのも自然なことです。
そこで本記事では、
- 事業戦略(経営戦略)は何のためにあるのか
- 中小企業ではどう考えるのが現実的か
- 計画と柔軟性をどう両立させるか
について、私自身の実務経験も交えながら整理してみます。
📌 本記事の位置づけ
本記事は、理論解説というより「現場でどう考えているか」を整理したメモに近い内容です。
体系的な戦略論ではなく、感覚的に理解できる部分だけ拾って読んでもらえれば十分です。
中小企業における「事業戦略」と「経営戦略」
一般論としては、次のように整理されます。
📊 経営戦略(Corporate Strategy)
- 対象範囲: 企業全体
- 目的: 企業の長期的な方向性を定め、どの事業領域で競争するかを決める
- 例: 多角化、海外進出、M&A、事業ポートフォリオの最適化
📊 事業戦略(Business Strategy)
- 対象範囲: 特定の事業単位
- 目的: 選択した市場で競争優位を確立する
- 例: 価格戦略、差別化、マーケティング戦略
🔍 中小企業では?
ただし、中小企業では主力事業が1つであることも多く、実務上は
事業戦略=経営戦略
と考えて差し支えないケースがほとんどです。
一方、複数の事業を持ち、それぞれ成長段階や収益性が異なる場合には、
- 経営戦略(会社全体の方向性)
- 事業戦略(事業ごとの勝ち筋)
という二層構造が必要になります。
まずは
「自社は実質1事業なのか、複数事業なのか」
を整理するだけでも、戦略の考え方はかなり明確になります。
💡 本記事では、「事業戦略=経営戦略」として話を進めます。
なぜ「事業戦略」が必要なのか
事業戦略を持たない会社では、次のような状態が起こりやすくなります。
❌ 経営の方向性が共有されず、意思決定が場当たり的になる
❌ 人材・資金・時間の優先順位が曖昧になる
❌ 市場や競争環境の変化への対応が後手に回る
❌ 社員が仕事の意味や目的を見出しにくくなる
❌ 投資や採用の判断が感覚頼りになり、財務リスクが高まる
❌ 新しい挑戦やイノベーションが生まれにくくなる
これらは、能力や努力の問題というより、
「共有された方向性や判断基準がないこと」に起因します。
💡 事業戦略は「道具」
私は、事業戦略を
立派な計画書を作ること自体が目的なのではなく、
会社としてどこへ向かうのかを共有するための道具
だと捉えています。
「5年後のありたい姿」から考える戦略
多くの支援機関や金融機関では、
✅ 3年〜5年後のありたい姿(ビジョン)
✅ そこに至るための中期計画
✅ 年度ごとの課題設定と見直し(PDCA)
というフレームが用いられています。
「5年後のありたい姿」を起点に考える方法は、特定の機関に限らず、全国的に使われているスタンダードな考え方です。
📌 この方法の利点
✅ 方向性がぶれにくい
✅ 社内で共有しやすい
✅ 数値目標と行動を整理しやすい
環境変化が激しい時代の課題
一方で、近年は
- 原材料価格の高騰
- 人件費の上昇
- 市場ニーズの変化
- 技術進化のスピード
などにより、計画の前提条件そのものが崩れるケースも珍しくありません。
そのため私は最近、
「毎年の課題を修正するPDCA」だけでなく、
計画そのものを定期的に見直せる仕組みの重要性を強く感じています。
実務で経験してきた「ローリング」という考え方
私自身、前職では、
- 長期(約20年)の全体プラン
- 5年ごとの中期計画
- それを毎年見直す「ローリング形式」
という、異なる時間軸の計画立案に関わりました。
🔄 ローリング形式とは?
ローリング形式の特徴は、
計画を固定せず、毎年「先の期間」を更新し続ける点にあります。
具体的には、
毎年ローリングで直近1年先の計画を更新し、
あわせて5年ごとに長期(20年)計画そのものを見直す、
という運用を行っていました。
📈 ローリング形式のメリット
これにより、
✅ 長期的には大きな方向性がズレない
✅ 一方で、直近の状況や環境変化を計画に反映し、解像度を高めていく
というバランスを取ることができます。
ローリング形式によって、
- 実績との差
- 外部環境の変化
- 当初想定していた前提条件のズレ
を毎年確認しながら、
計画の現実性と鮮度を保つことができました。
⚠️ 計画が形骸化する最大の原因
私の経験上、計画が形骸化する最大の原因は、
「作った時点の前提条件をそのままにすること」です。
ローリング形式は、前提条件そのものを定期的に問い直す仕組みとして、非常に有効だと感じています。
💡 最近気になっている考え方
最近は「A/B/C案を持つ」というコンティンジェンシープランという考え方も気になっています。
まだ自分の中で整理途中ですが、環境変化が大きい今、中小企業とも相性が良いのではと感じています。
中小企業にとって現実的なのは「ハイブリッド型」
これまでの経験と学習を踏まえると、
中小企業にとって現実的なのは、次の組み合わせだと考えています。
🎯 現実的な戦略の組み合わせ
✅ 長期の軸(5年後のありたい姿)
✅ ローリングによる計画の見直し
✅ 必要に応じたA/B/Cシナリオの準備
つまり、
軸はぶらさず、進め方は柔軟に変える
というスタイルです。
計画を「守るもの」にするのではなく、
「使い続けるもの」として扱うことが重要だと思います。
事業戦略は補助金にも活用できる
実務的なメリットとして、事業戦略は補助金申請にも活用できます。
事業戦略を整理しておくと、
- 事業目的
- 市場・競争環境
- 数値目標
- 実行計画
が明確になり、補助金申請書の土台として使えるケースが多くなります
(※フォーマットに応じた調整は必要です)。
📋 戦略がある会社の強み
戦略がある会社は、
✅ 申請書全体の一貫性が高い
✅ 数値に根拠を持たせやすい
✅ 採択後の実行・検証がしやすい
という点でも有利になります。
まとめ
事業戦略は、固定された地図ではなく、
環境の変化に応じて進路を調整するための羅針盤だと考えています。
事業戦略は、
✅ 一度作って終わりのものではなく
✅ 環境に合わせて更新し
✅ 判断を助ける道具として使い続けるもの
です。
🌱 中小企業だからこその強み
中小企業だからこそ、
大企業ほど精緻でなくていい代わりに、柔軟であることが強みになります。
もし、
- 今のやり方に少し不安がある
- 社内で方向性を共有したい
- 投資や新しい挑戦を考えている
そんなタイミングであれば、
一度立ち止まって事業戦略を整理してみる価値は十分にあると思います。
🤝 一人での整理が難しい場合は
一人での整理が難しい場合には、
- 中小機構
- 産業振興センター
- よろず支援拠点
- 商工会議所
などの支援機関に相談するのも一つの方法です。
ご希望があれば、状況に応じた支援先をご紹介することもできます。
💭 最後に
私自身、計画がうまくいかなかった経験はたくさんあります。
それでも、
「何も備えていないよりも、少し考えておく方が判断は楽になる」。
それくらいの距離感で、事業戦略を捉えてもいいと思っています。
戦略は、経営者を縛るものではなく、 経営者を助けるものです。
まずは、自分の言葉で「どうなりたいか」を書き出してみる。
そこから始めてみませんか?

