行政の現場で感じた「制度と現実のズレ」 ― 外郭団体で働く中小企業診断士が考えたこと ―

日々の現場メモ

こんにちは、中小企業診断士のSacChiです。

今回は、少しいつもと違うトーンで、今の仕事を通じて感じていることを書いてみようと思います。

私は現在、県に関わる外郭団体で、
企業さんの事業支援や、県の制度設計に近い仕事に携わっています。

もともと行政的な組織が自分に合わないことは分かっていましたが、
「一度は内側から見ておきたい」
「経験として知っておきたい」
という思いで、この環境を選びました。

実際に組織に入って感じたのは、個々の人の問題というより、制度(理想)と現実のギャップが、想像以上に大きいということです。

制度が、企業を支援する現場や、支援を受ける企業の現状に追いついていない。
これは個別の運用の問題というより、構造的な課題だと感じています。

制度は、県などの制度設計側が公平性や説明責任を重視して設計します。
一方で、制度を運営し企業を支援する外郭団体の現場には、個別対応やスピード、柔軟性が求められます。
さらに、支援を受ける企業には、それぞれ異なる経営課題や現実があります。


📊 3つの立場の違い

立場重視するもの
制度を作る側(官)公平性、説明責任、前例
制度を運営する側(外郭団体)個別対応、スピード、柔軟性
制度を使う側(企業)実効性、成果、現実的な支援

この前提の違いがある限り、3者の間にギャップが生じるのは、ある意味必然なのかもしれません。


制度と現場(運用)のギャップ

たとえば、公平性を担保するために定められたルールがある一方で、実際の運用では「例外」が当たり前のように発生する場面があります。

ルールは正しい。
しかし、現場に落とし込まれる過程で、別の判断軸が優先される
その結果、担当者は

「ルールを守るべきなのか」
「指示に従うべきなのか」

で板挟みになります。


⏰ 単年度主義の限界

また、行政の事業は基本的に単年度です。
そして、外郭団体という立場上、トップ層が定期的に変わることもあります。

その結果、長期的な視点での計画や改善が、どうしても形骸化しやすい構造があります。
中長期のビジョンや計画を議論していても、実際の業務は「当年度中に終わらせること」が最優先になる。

このギャップは、民間にいたときとの違いを一番感じるところで、強く違和感を覚えます。

もちろん、行政ならではの制約や事情があることも理解しています。
説明責任、前例、議会対応――それらが重要なのも事実です。

ただ、それでも
「この設計のままで、本当に企業さんのためになる支援ができるのか?」
と感じる場面が増えてきました。

支援先には中長期の事業計画の重要性をお伝えする一方で、
自分たちの組織では同じことが十分にできていない。
そんなジレンマを感じる場面も少なくありません。


制度と企業の現状のギャップ

特に補助金制度については、制度の考え方と企業の現状とのギャップを感じることが多くあります。

本来、補助金や助成金は企業の成長や変革を後押しするもののはずですが、実際には短期的な支援やキャッシュの改善に留まってしまうケースもあります。


📌 具体的なギャップの例

1. 支払い期限の制約

「〇月〇日までに支払いが完了しているもの」が対象

→ 設備投資と異なり、DXはサブスク型が増えており、短期的なキャッシュ支援に留まりがち


2. 付加価値額向上の要件

売上・人件費・減価償却費のいずれかを上げる必要がある

→ 人手不足・設備老朽化・原資不足の中で、そもそも打ち手を持てない企業も多い


3. 賃上げ要件(2.0%など)

地方の中小企業にとってはインパクトが大きく、現実とのギャップを感じるケースもあります


制度としての整合性や意図は理解できる一方で、
前提となる企業の実態とのギャップが大きいケースもあり、
結果として制度の本来の目的と実際の使われ方に差が生じているように感じています。


⚙️ 運用側の負担も大きい

そしてもう一つ。
制度を運用する側の負担も、決して小さくありません。

本来であれば企業支援に時間を使いたいのに、DXや生産性向上を推進する立場でありながら、制度の性質上、証憑管理や手続きが非常に多く、結果としてアナログな運用が残り続けているのも事実です。

気づくと、

「支援のための制度」ではなく「制度のための業務」

になっていることも多くあります。


制度を取り巻く三者の関係について

制度を作る側(官)、制度を運営し支援する側(外郭団体)、そして制度を使う側(企業)。
それぞれの立場や目的が違う中で、同じ方向を向く難しさも感じています。

もちろん、連携そのものを否定するつもりはありません。

ただ、この三者の前提や評価軸の違いは、実際にそれぞれの立場に身を置いてみないと見えにくく、簡単に埋められるものではないとも感じています。


🌉 ギャップを埋める存在として

そういった意味では、民間企業も県の外郭団体の経験もある自分は、
この三者のギャップを埋める側に近づけているかもしれません。

制度を作る側(官)と使う側(企業)、そしてそれを橋渡しする外郭団体の距離が、
少し近づくだけでも変わることがあると思っています。

制度設計の段階で現場の声をもう少し反映できれば、
より解像度が高く、感応性と実効性のある支援につながるのではないかと感じています。


⚠️ 自分への懸念

ただし、私自身は官に近い環境に長くいることで、企業さんの感覚とズレてしまわないか、
それが怖いです。

いつまでも、民間の、企業目線で支援をしていきたい。

それでも現在、行政と民間の考え方や時間感覚の違いを体感できていることは、
無駄ではないと信じています。


おわりに

同じように、違和感を感じながら働いている方にとって、
少しでも何かの整理になれば嬉しいです。

これは結論のある話ではありませんが、今の時点での自分の考えとして、残しておきたいと思い記録しています。


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